この企画は、テキストとイラストのコラボレーションです。 第三世界の紛争地帯を取材されている加藤亮さんから、「職と食」というテーマでエッセイを頂きました。熱帯のジャングルで息をひそめて闘う反政府ゲリラ、それを追うフォトジャーナリスト。そんな彼ら彼女らの<食>へのこだわりとはいったい、どのようなものなのでしょう?
料理はしない、出されたものを食べる。食べ物に全く興味のない私は、食に関わることに時間を割く気などさらさらない。行列してまで食べたいものもないし、料理も一切しない。外国へ行っても、わざわざ食べたいものもなく、出されたものを何でも食べることにしている。パプア・ニュー・ギニアでは、幼虫料理を出された。
ゲリラの取材で見たものは
1999年、インドネシアからの独立を目指して戦っている西パプアのゲリラを取材するために、ゲリラを支援している活動家父子と、パプア・ニュー・ギニアのジャングルに行ったときのこと。ジャングルで小休止していると活動家の息子が、倒木の樹皮を斧ではがし始めた。すると樹皮の裏から、昆虫の巨大な幼虫が何匹も出てきた。
モスラの幼虫を細長くしたような形で、色は白っぽい。大きさは、モスラよりも小さく、10cmぐらいだったと思う。カブトムシの幼虫というよりは、カミキリムシ科の幼虫のようだ。
倒木から幼虫を採っている息子は、時々そのまま生きた幼虫を口に放り込んだ。私も生で食べさせられるのか。そう思うと、父親の方は幼虫を木の葉に包み、地面に置き、火をおこした。
しばらく蒸焼きにして、灰の中から幼虫を包んだ木の葉を取り出す。「食うか?」と、父親が私に葉っぱを差し出した。
紛争地で内臓をしゃぶる
葉を開くと、中が煮えて皮がはじけたようで、赤いペースト状の内臓が飛び出していた。まるで、合成着色料を使ったタラコのように赤い。 丸ごと口に放り込み、奥歯で皮ごと噛むと、皮の破れたところから内臓が搾り出され、口の中に広がった。味も、外観同様、タラコのような味がした。要するに生臭いということかもしれない。
皮はビニールのように硬く、内臓をしゃぶり尽くした後、噛み続けても、ずっと口の中に残っていた。周りを見ると、皆皮だけ吐き出していたので、私もそれに習った。飲み込まなくてよかった。
外観はともかく、シーフードが好物の日本人なら、ちょっと醤油でも垂らして、熱々のご飯にでも乗せれば、誰もが美味いと思うだろう。
加藤亮:フォトジャーナリスト:(website)Photojournalist Crosses the Borders
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