
【ワニをマッサージするパンダ(イラスト:キムラクニヒコ)】
若いころ、詩を書こうと思った。書いてみると、どれも標語ようになってしまった。このような古い記憶が樋口えみこさんという詩人の名前から甦るのである……。
2021年秋に樋口えみこさんがワニの切手が印象的なテキストサイト「ぺんてか」で近況を綴った。私は樋口さんと会ったことはないが、私の青春の人そのものなので久しぶりの更新がうれしかった。
20代のころ、私の周りは詩人だらけだった。そのなかの1人、友人の歌人Sに「ぺんてかというサイトがある、お前は修行のためにそこへ投稿しろ」と勧められた。主宰の樋口さんに詩を送ると、気に入ってもらえれば「ぺんてか」で紹介される。
いくつか詩をしたためた。標語ようだった。案の定、一度も採用されなかった。しかし、同サイトの掲示板などを通じて、さまざまな若い詩人たちと知り合いになった。
あれから数十年。同サイトの動きは、2000年代後半から停滞しているようだ。樋口さんは元気なのだろうか、とときどき思った。
人生を半世紀近く生きていると、過去を振り返りたくなるものなのだ。一度、Twitterでこのようにつぶやいた。
10年以上も前にぺんてかに投稿したことがあります。樋口えみこさんはいまも元気なのでしょうか。
— モクソン ホウ (@kimukuni) October 20, 2020
Twitterで反応はなかった。ところが、樋口さんご自身がテキストサイトを更新したのである。
「樋口えみこ」でエゴサして、「樋口さんは生きているのだろうか」みたいなtweetを見つけて苦笑。
自分の目につくところから消えたからと言って、人はそう簡単に死なないでしょう。
今のような状況下ではあっても。簡単には。(出典:2021.9.1 http://penteka.la.coocan.jp/sub1/omake1509.htm)
おそらく私の前後のツイートのことに触れているようだ。書かれた内容はよくわからなかった。「今のような状況下」とは何を意味しているのだろう。ただ、近況を漠然と知れたのはよかった。過去に出会った人は(もっとも樋口さんとは直に会ったことはないけれど)、自分自身の歴史の一部を形づくっているだからなのだろうか。
2021年に人間社より、樋口さんの詩集「生まれて」(2007年)が14年ぶりに増刷されたという。本書を手に取ってみたくなった。詩人と作品は細く長く、生き続けるものなのだと思った。