偽ポジティブ思考のワナ
ポジティブに解釈して「運が良かった」と感謝すると良いほうに展開し、ネガティブに解釈して「運が悪かった」と落ち込むとますます悪くなる。では、誰でもポジティブに考えさえすれば良いのだろうか、と著者は問いかけます。
こうした考察から「ポジティブ思考」と「ポジティブ思考のように見えるもの」を分けて考える必要があるとして、後者を「偽ポジティブ思考」と名づけました。これを3つのポイントから説明しています。
こうした考察から、著者が導き出した「精神衛生上良いポジティブ思考」というものを挙げています。「ポジティブ思考自体を、気楽に行うこと」。それが本物のポジティブ思考であり、それならばに幸運を呼ぶだろうとしています。
これらの指摘はもっともな意見でありつつも、ふだんの生活では案外忘れがち。他人の不幸と比較して自らの「幸運」を根拠づけたり、物事を否定的だったり重く見すぎたりする光景を、自分の人生を振りかえるとどれほど目撃してきたことでしょうか。
本書の副題には「今、ここ」という文言が付されています。本書の本文中で19回も使われている重要キーワードです。
「今、ここ」は哲学用語風に言えば「実存」。「今、ここ」をあるがままに認め、肯定することを促す提案には、生を肯定する力づよさを感じさせました。