正月2日目は約160年の歴史を持つ日本最大のチャイナタウン、横浜中華街へ妻と2人で訪れた。街の大きさは約500m四方もある。
2019年は中国に実際に行ってみようと思っている。中国は良きにつけ悪しきにつけ、世界へ影響が大きい国だ。しかし、日本のお隣にある国なのに、新聞を読んでもいまひとつ実像がつかめない。まずは手慣らしというわけでこの街に来てみたわけだ。
街の一角には華僑 の心のよりどころとして重要な存在の「関帝廟」がある。祀られているのは三国志でおなじみの関羽。除災・健康、解難・健康・縁談・安産、金運・財産安全の御利益があるそうだ[1] 。
500円の拝観料を支払うとお札と5本の線香が手渡される。指定の場所に線香を立て、それぞれの御利益があるお像に願をかけてゆく。もらったお札はお守りになる。
お参りは終わった。小腹が空いた。ところが、大きな街なのでどの店がよいのかさっぱりわからない。
横浜中華街発展会による2010年の調査によると、横浜中華街には620の店舗があり、そのうち中国料理店は226店、その他飲食店が83店[2] 。300近くの飲食店から選ぶのは骨が折れる。しかも一口に中国料理と言っても、広東料理、四川料理、北京料理、福建料理、台湾料理……とさまざまだ。
あちこちの店先ではふかしたての中華まんが売られている。値段は100円から1000円以上するものまである。店に入らず、食べ歩くだけも十分に楽めるだろう。
あてどなく中華街をウロウロしていると、甘栗を露天販売していた若い中国人女性に呼び止められた。小股が切れ上がった化粧っ気のない色白の美女だ。美女は「お姉さん、旦那さん、ちょっと、ちょっと」と言った。甘栗の皮を素早く剥くと、妻と私に1つずつ手渡した。
甘栗をもらうと妻の顔が少女のように輝いた。「おいしー」とか言って食べている。妻は無料とおまけに弱い。そんな女心を、甘栗美人は瞬時につかんでしまった。一方、私は突然のことで、豆鉄砲くらった鳩のようにぽかんとしていた。美女は頼もしい姉御風で、親しげに話しかてくる。
「私、もう帰るからおまけするよ、ほら、ほら、ほら」と大きな袋に甘栗をあふれんばかりに詰め込み、妻に「ほら」と渡そうとしている。
値段は1500円である。この金額があれば、肉まんを何個食べ歩きできるだろうか。なんてことを私は考えた。目の前で肉まんが天津甘栗に変わろうとしていた。
はっと我に返った妻は「こんなに食べられない」と中国語でうれしそうに叫ぶ。この甘栗美人の気前の良さが、すっかり好きになってしまったようだ。甘栗美人は「お姉さんは中国語ができるからまけてあげるよ。それでは一番小さい袋がいいね」と言った。その袋もあふれんばかりの山盛り。2人の間でいつのまにか商談成立していた。私は甘栗美人の商売上手さにいたく感心した。
山盛りの甘栗は500円。私たちは甘栗を頬張りながら、中華街を歩き続けた。
歩き疲れてしまったので、直感を頼りに「大連餃子基地」という店に入った。
北欧レストラン風のきれいな店構え。この店で正解だった。清潔感があってデートにもぴったりそう。ちなみにトイレもきれい。ビールとワインで乾杯した。
水餃子、焼き餃子の「大連餃子」、担々麺を注文した。2人分で飲みもの含め4千円程度。餃子の食感はつるりとして、とろけるようだ。
担々麺は山椒の風味がピリッと濃厚なスープを引き立てていた。
横浜中華街にいた時間は2〜3時間程度。異国を小旅行するような時間をすごせた。しかし、これだけでこの街を知るのに十分ではない。予習をしてから再び訪れてみようと思った。(写真も筆者)