週末、天井が高く風通しのいいカフェでくつろいでいました。店内ではBrian Eno「No One Receiving」(1977年)のカバー曲が流れています。現代風のエレクトロニカにアレンジされて、すばらしく洗練されたできばえでした。
コーヒーも飲み終わり精算を済ませようとしたとき、アーティストの名前も知りたかったのでレジ係の若い女性店員に質問しました。「気になる曲があったのですが、ここで流れている曲はCDなのですか?」と。
その店員さんは顔をこわばらせました。何か地雷を踏まないように言葉を選んでいるようです。どれも、アーティスト名にたどりつく言葉ではありません。私は嫌な予感がしました。
次のように言いました。「安心してください。権利団体の関係者ではありませんからね」と。すると、われながら言い訳をしているようです。だんだん泥沼にはまってきました。店員さんはますます不安そうな顔つきでおびえます。視線をそらし、厨房(ちゅうぼう)の奥にいた店長らしき人とアイコンタクトを始めました。助けを求めている様子です。
何だか居心地が悪くなったので、そうそうに勘定を済ませて店を出ました。結局、Brian Enoをカバーしたアーティストの名前は分かりませんでした。とはいえ、YoutubeでNo One Receivingと検索しますと、さまざまなアーティストたちを発見できます。こうしたきっかけとなったこと自体はありがたい出来事ではありました。
コーヒーと選曲の素晴らしいあのカフェへ、懲りずにまた行ってみます。カフェのたしなみは、店内で流れている音楽のことは質問しないことだと思いました。