捜し物が携帯電話やスマホなら、まだマシです。番号に電話をかけてみればよいのですから。着信音で見つかるかもしれません。
ところが、メガネとなると最悪です。自分の頭部に置き忘れたメガネを捜している、あの磯野波平さんの悲哀はわが身のように感じます。
私は≪メガネ捜し用のメガネ≫も用意しています。この≪メガネ捜し用のメガネ≫すらも見つからなかったらなら…。よく見えませんので、途方に暮れます。お風呂上がり、寝起き…。1日2~3回は捜しているかもしれません。「にんにくにんにく」と唱えながら。このおまじないは、数年前に妻より教えられたものです。
「捜し物をするときは、にんにくにんにく、と唱えると見つかりますよ」
なんでも、幼い日に妻が妹から教えられた「おまじない」なのだそうです。しかし、義妹はどこでこの「おまじない」を知ったのでしょうか。妻も知りません。私は、きっと、義妹の好物がにんにくだからに違いない、と想像しました。ところが、実は予想以上に由緒正しいものだったのです。どうもヨーロッパに起源があるらしいことが分かりました[1]。
魔女やドラキュラが信じられていた時代のことです。この地の人々は、物が見つからないのは魔女が隠したからと考えました。捜し物をするときには「にんにく」と唱えることにしました。魔女は「にんにく」が嫌いですので、隠していた物を返してくれるのだそうです。
私のメガネも魔女が隠しているようです。これからも、にんにくにんにく、と唱えてメガネを捜すことにします。