【殿、利息でござる!】羽生結弦が映画出演、仙台のお殿様役で

殿、利息でござる!(Illustration by kimukuni)

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ポスターも個性的な映画です。さっそく観てみました。

目次

ギャグ・コメディー映画ではなかった

この映画ポスターでは、阿部サダヲさんが銭のちょんまげをしています。暴走気味のポスターやタイトル、キャスティングを見ますとコメディー映画にしか見えません。ところが、銭のちょんまげをしている人物は劇中に登場しません。それどころか、シリアスで真面目なストーリーなのです。ギャップに心底驚かされました。

物語では銭のちょんまげはしていません。

江戸は粋、東北は嫌味の文化

舞台は、仙台藩の貧しい宿場町・吉岡(よしおか)宿です。つらい役務もあり、破産者と夜逃げが後を絶ちません。困窮する町を救おうと、社会奉仕に熱心な篤志家たちが立ち上がります。史実にもとづくお話です。どんでん返しもあり、終始飽きさせません。上映時間があっという間に終わりました。

東北人の私は、ふと思いました。「嫌味を言う東北人が一人も登場しない。まるで東京人のようだ」と。

江戸が粋なら、東北は嫌味の文化」が私の持論です。この映画の舞台となった黒川郡よりも、さらに山深い宮城県遠田郡涌谷町。そこは私のルーツで、父の故郷です。

子どものころに、かの地の住人・親戚たちを訪ねますと、独特のユーモアセンスに面食いました。思っていることとは逆の言葉ばかりを口にします。雪が降ると「今日は天気がいい」ととぼけたり、体調が悪ければ「体調がいい」とうそぶいたり、うるさい子どもを見ると「今日はずいぶん大人しいな」と嫌味を言ったりします。でも、これらは悪意でなくユーモアなのです。

我らが祖先は、飢饉のときにはカラスや犬を食べ、凶作のときには身売り奉公に出されかねませんでした。つらい現実とは逆の世界を夢想する必要もあったことでしょう。東北人のユーモアセンスには、ルサンチマン(怨念)が影を落としています。

この映画には、嫌味な東北人は一人も登場しません。誰でも理解できる世界性があり、軽妙な作品として成功しています。

羽生結弦さん、映画での演技は?

この映画では、仙台出身のフィギュアスケート選手・羽生結弦さんも出演しています。羽生結弦さんの演技を見ていると、終わったばかりの平昌冬季オリンピックでの雄姿まで脳裏によみがえってきます。

仙台藩主「伊達重村(しげむら)」役。羽生さんの演技はまるで、お公家さんのようです。あか抜けています。このお殿様は、物語の後半で、篤志家をねぎらいに突然姿を現します。お話が終わると、吉岡宿から城まで歩くと言いだします。

吉岡宿から仙台中心部まで、徒歩でどれくらいの時間がかかるのでしょう。GoogleMapで調べると、仙台駅から黒川郡大和町吉岡までなら、4〜5時間程度です。地形は起伏があるので、ふつうの大人なら難儀することでしょう。

そこは、お殿様を演じる羽生さんです。劇中の歩きっぷりは、すこぶるさっそうとしています。氷の上を滑るように片道1時間ぐらいで到着してしまいそうです。

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この記事を書いた人

法政大学文学部哲学科卒。編集関係の業務に従事。金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味は絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。

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