『ねこ新聞』は、日本に存在する唯一のねこ文学専門紙です。1994年の創刊から22年目の今年、10月12日で200号を迎えました。
男のロマンは、女の苦労。
ユーモアを交えてこう語るのは月刊『ねこ新聞』副編集長の原口美智代さんです。さらに、このように続けます。
猫も文学も好きではなかったけど、夫が始めちゃったことだから…。
この偉業にちなんだ座談会が、10月23日、猫新聞社がある東京都大田区内で催されました。メディアウォッチャーの私も拝聴してきました。
月刊『ねこ新聞』とは
富国強猫
月刊『ねこ新聞』は、ねこと文学をテーマにした、8ページほどのタブロイド判です。モットーは富国強猫で「ねこがゆったりと眠りながら暮らせる国は平和な心の富む国」[1]という思いを込めて編まれています。
切り盛りするのは、原口ご夫妻です。編集長の原口綠郎さんは、もともとは中東で日本の大商社等の相談役をされていました。しかし、暗いニュースが多い世の中で、心を癒す仕事がしたいと『ねこ新聞』の発行を思い立ったそうです。
質の高い紙面づくり
浅田次郎、山田洋次、群ようこ、横尾忠則、森村誠一、加山雄三、養老孟司、赤瀬川原平、川上麻衣子、清水ミチコ、斉藤由貴、町田康、蝶野正洋、ビートたけし、いわさきちひろ、やなせたかしなど、そうそうたる人たちが紙面を飾ってゆきました[2]。直近の号でも、和田誠さんのような大作家が、猫の素敵なイラストを寄せています。副編集長 原口美智代さんは、紙面のクォリティを維持する苦労や秘訣を、お話してくださいました。
『ねこ新聞』は広告収入に頼らず、読者の購読料や寄付だけで発行しています。したがって、大新聞や大手出版社ほどの多額な原稿料で執筆依頼はできません。しかも、必ずしも書いて欲しい作家にコネがあると限らない。編集長が病に倒れたり、経営上の困難にもたびたび遭遇します。
このような制約のなかでも、絵本のような温もりと、読み物として質の高い紙面を維持し続けます。病に伏しても企画が湧き出る編集長 原口綠郎さんの存在は大きい。コネがなくても、粘り強く原稿依頼をするチャレンジ精神、企画の面白さで数々の困難を乗り切ってゆくのです。『ねこ新聞』の疾風怒濤の小歴史を拝聴していると、メディアを成功に導く秘訣を見つけることができます。
「面白そう」と感じさせるもの
SNSで拡散を狙うだけのウェブメディアの「ねこ動画」は軽薄ですし、こだわりを感じさせるメディアはあるようで、実は少ないものです。そのようななか、紙媒体の『ねこ新聞』は魅力的なオリジナルのコンテンツで情報を発信し、老舗でありつつも紙面は新鮮さであふれています。
執筆者、スポンサー、読者。どのような立場からでも、頑張っている人を見ると、応援したくなってくるものです。さらに、面白そうなら、ときには無償でも引き受けたくなってくる。このようにして、『ねこ新聞』には、猫好き作家のエールが記事として集まるのでしょう。