大学時代の友人から、シンガーソングライター・棚木竜介(タナキリュウスケ)さんの作品を教えてもらった。取り寄せたミニアルバムの「棚木竜介と図書館 / e.p.」[1]を聴けば、なるほど素晴らしい。だけど、ディスコグラフィー、バイオグラフィーなどアーティストの公開情報は少ない[2]。私が得られた情報源は、Twitter[3]、tumblr[4]、Facebookで得た断片。そして、手元にあるこのCDRである。
この作品の音を頼りに、アーティストの姿をつかんでみようと思った。
1曲目の『チェンジ・ザ・ワールド』は、メッセージソングのような曲名だけど、歌われているのは社会のことではなく「君」のこと。モコモコブンブンの、印象的なベースから始まる。
3曲目の『やさしい町』では「金がもう無いとか/あの頃は良かったねとか/そんな大してかわんねよ」というフレーズに、思い当たるものを感じ、思わず苦笑いした。
フォーク、ロック、ブルース、ボサノヴァがないまぜになったような、ジャンルにとらわれないサウンドが良い感じ。棚木竜介さんが用意した世界で、参加ミュージシャンたちも心地よく演奏している。
このアルバムの要は、北山ゆう子さんのドラムだ。曽我部恵一さんなどのバックもつとめた[5]キャリアを持つドラミングは、小気味よく疾走し、非常に気持ちよく太鼓を鳴らす。動画で見るお姿は、優雅さも感じるほど見事だ。ギタリストの渡瀬賢吾さんも雄弁だ。ピッキングの強弱で歪みを生み出す音色はシブい。とりわけ2曲目「ソフロ」で聴かせるブルージーなフレーズに鳥肌が立った。ベーシストでキーボディストの不知火庵さんは、音と音の間を適切に紡ぐ。適切に残された音の間は、聴き手にミュージシャンとの距離感を伴って伝える。
このアルバムでは、快調で、健やかな大人の世界を見せてくれる。エイトビートをめったに聴かない妻も、「あら、いいわね」なんて言っていた。もっともっと世間に知られてゆくべきミュージシャンだ。
【脚注】
- OURLIFE MUSIC、2014年発表 ↩
- 2016年7月31日段階 ↩
- 棚木竜介(@tanakiss43)さん | Twitter、閲覧日:2016年7月31日 ↩
- ホタテtumblr、閲覧日:2016年7月31日 ↩
- 「棚木竜介と図書館 / e.p. | OURLIFE MUSIC」大森元気、【商品紹介・解説】より、閲覧日:2016年7月31日 ↩