人が本と上手につきあうコツは、売ったり捨てたりするテクニックを身に付けることだと思う。しかし、独身時代の私はそのテクニックが、ほとんど身についていなかった。本はどんどん増えてゆき、さらに一部屋借りた。そのうち、本の重みで、床が抜けてしまった。
たいていの書籍は、古本屋で売れる。だけど、雑誌はほぼ売れない。読書愛好家のなかには、紙の香りや、紙をめくる味わいが本の良さだと言う人もいる。私は、香りを楽しむなら、アロマテラピーやお香の方が良いと思う。読書は便利な方法で、場所もとらない方が快適だ。モノが多くなると、金も、空間も、時間も浪費する。
その点、電子版は良い。持ち歩きが楽だし、(場合によっては)検索ができる、古紙のゴミ出しも減る。私の思いは、世間の趣向と響き合ったようだ。報道によると、雑誌の売り上げが書籍を下回ったという [1] 。
日本出版販売(日販)の発表によれば、2016年3月期の雑誌の売上高が32年ぶりに書籍を下回った。日販の仕事は、出版社と書店に本を流通させる取次業務である。その日販によれば雑誌の売上高が昨年に比べ約一割減となったという。書籍が売上高で抜かしたというより、雑誌が落ちてきた構図だ。雑誌は納品したうちの四割が売れずに返本されている。返本率でも、書籍の三割を上回る。
信頼性のある情報、企画の面白さ、上手なまとめ、スクープの発信。雑誌には役目がある。なんとか生き残っている大手新聞各社のように、読者は必要な情報にはお金を出すものだ。「東洋経済オンライン」のように、雑誌社がWEBメディアへの転換と充実を計り、生き残ってゆく道もある。
記事を「Webコンテンツ」と捉え直し、紙だけでなくウェブにも道を見出す発想が、より必要になってきている。技術や資金の不足、再販制度への未練、古い企業風土など、中小零細出版社は様々な困難を抱えている。が、それはあくまで会社側の都合であって、ユーザーファーストの考えとはほど遠い。悲しくも、古き出版文化の凋落は如実に表れていて、その先には店じまいが見え隠れする。
読者(私)は、紙だろうが、ネットだろうが、とにかく読めりゃ良い。本の重みで床が抜けた経験を持つ私は、切に思う。情報をWEBコンテンツとして捉え、ネットをより活用できるようになれば、紙の需要が減って熱帯雨林の森林伐採も減るじゃろう。