2016年4月24日は日曜日。新聞の朝刊を眺めていると、着流し姿の町田康氏の写真に目を奪われました [1]。文士然としていて、惚れ惚れします。記事の内容は、住まいのリフォームに関する自書『リフォームの爆発』の解説でした。
住まいのリフォームは、だれしも身近な部類のテーマでしょう。我が家でも二年前にリフォームしたばかりです。住処が古くなったり、不具合が出てきたらどうしましょうか。
静岡県熱海市で犬や猫と暮らす作家の一軒家でも、次のような不具合が生じていました。
- 人と寝食を共にしたい居場所がない大型犬の痛苦。
- 人を怖がる猫六頭の住む茶室・物置小屋、連絡通路の傷みによる逃亡と倒壊の懸念。
- 細長いダイニングキッチンで食事する苦しみと悲しみ。
- ダイニングキッチンの寒さ及び暗さによる絶望と虚無。
作家の「マーチダ」氏は、自宅の大改装をすることにしました。工務店選び、予算の問題、職人が短い休憩をとるとき、いかに茶菓を出すかといった心理戦など、このリフォームの経験を小説形式でつづります。
本書のキーワードは「永久リフォーム論」で、町田康さんは「どこかが新しくなるとバランスが悪くなるので、別の場所を手直ししたくなる」と日経新聞の朝刊で答えています。この気持ちからは、土地と家屋に愛着を持ち、長く住もうという意識も垣間見えます。熱海に9年間も住み続けていて「静かなので没頭して小説を書くには合っている」といいます。このような愛着ある土地ならば、住処の不具合には「我慢する」と「リフォームする」という選択肢になるでしょう。
でも、土地や家屋に執着しなければ「引越する」という手もあります。
作家が住む熱海のような、素敵で快適な土地に引越するのも一案です。住処の不具合や老朽化とともに、新しい世界も開けていることを感じます。
私は新聞記事を指さし「町田康のような、熱海住まいの謎のオッサンになりたい」と妻に言いました。着流しが似合う男になりたいという意味だったのだけど、妻は町田康の写真をみて「カツラが必要ね」と私に言ったのでした。ぎゃふん。