【ラウエンシュタイン兄弟監督『バランス』】皮肉な世界に考えさせられる

ラウエンシュタイン兄弟の監督作品『バランス』(balance)

いまから10年ほど前、インディーズ系アーティストの友人たちのあいだで話題になっていたショートムービーです。ブラックユーモアともいうべき、示唆にとむ内容が印象に残ります。実は、1989年度のアカデミー賞短編アニメーション賞も受賞していている、折り紙つきの作品でもあります 。

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どんなハナシ?

なぜか、宙に板が浮いています。その上には、5人の男が乗っているという、ありえない光景からハナシがはじまります。シュールです。

板の上は不安定で、おのおのが立ち位置を意識しながら、なんとか水平をたもっています。そんな彼らの板の上での仕事は釣り。ある日、5人のうちの一人がとんでもない「宝物の箱」(?)を釣り上げました。魅力的な音楽を奏でる箱に誘惑された5人は、だれもがそれを独占したいと思いはじめます。とうとう、いさかいが始まり、皮肉な結末を迎えます。

このショートムービーは、公式サイトほどの高画質ではありませんが、YouTubでも動画を見つけることはできるようです。

動画の出典:LUIS Trailer – YouTube

彼らは、いったいどうすればよかったのだろう?

板の上には、国も法律もなく、互いに交わされる言葉すらありません。一見すると、5人の男たちは、仲良く結束しているようにも見えます。しかし、それは間違いだとすぐに分かるでしょう。よくみれば、一人一人の動きはてんでばらばらで、仲間のためではなく、自分自身が板から落ちないように行動しているに過ぎません。

とはいっても、彼らには仲間に対してもともと破壊的な欲求があったわけでなく、野生的な状況が彼らを逃れがたく悪意あるものにしているのです。 もし、この板の上で平和で安全を手に入れたければ、物を独占したとか、(文字どおり)人を蹴落としたいとか、そのような欲求や権利を放棄して、5人以外のだれかに仲裁してもらったり、お互いに言葉を交わしてルールを決めなくてはならないでしょう。しかしながら、この狭い板の上には、そんなものは存在しないのでした。

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この記事を書いた人

法政大学文学部哲学科卒。編集関係の業務に従事。金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味は絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。

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