紛争やクレームが顧客からもちこまれたとき、最終的なゴールは「和解」です。決して、相手を打ちのめしたり、負かしたり、逆に卑屈になったりすることではありません。和解の仕方次第では、困っている人・怒っていた人とは、これまで以上に良い関係を築くチャンスにもなります。
始まり方を意識する
「問題を正しく認識する」「気持ちを合わせる」「安心させる」の3つのポイント
ものごとの始まり方は、終わり方を暗示しています。困っている人、怒っている人との話し合いは、信頼関係を築きながら行う必要があります。導入はシンプルに次の3つを念頭に置いて進めます。
例えば、あなたはマンションの管理組合の理事長をしているとします。マンションの住民から駐車場の件で苦情が寄せられたとしましょう。
①問題を認識する
怒っている人や困っている人に対して、何が問題なのか正しく認識していることを伝える。
例:「マンションの駐車場に、無許可で停めている車があり、歩行の邪魔になって困っているのですね。」
注意:駐車違反している車をどかすことではなく、安心して歩行できることが、相手が望むゴールかもしれません。
②気持ちを合わせる
例:「私も夜に、マナー違反の車を邪魔に感じたことがあるので、同じ経験があります。しかも、このマンションには歩行が不自由な高齢者も住んでいるので、他の方にとっても迷惑ですよね。」
注意:駐車違反者を含め、仮にライバルであっても、他者を攻撃し、おとしめる批判をしてはならない。あなたの品格が疑われるからです。
③安心させる
例:「ご安心してださい。しっかりとあなたのお話を聞きました。まずは、あなたに変わって私が車の持ち主に手紙を書いて届けることにします。私が解決できなくても、管理人、管理組合、管理会社も含めて、話をあげてみます。見守っていただけるだけのお時間はございますか。」
注意:「車の持ち主に手紙を書いて届ける」というゴールを提案しました。話合いの都度にゴールを設定しないと、話は終わりません。自分自身が解決できなくても、バックヤードが控えていることを伝える。時間がかかる可能性も伝える(期待値の設定)。
始まり方は、終わり方を暗示している
以上の3つのポイントはとてもシンプルですが、とあるグローバル企業(コンプライアンス遵守のために企業名は伏せますが)のクレーム対応では徹底して使われていて、顧客満足度で高い評価をはじき出しています。
困っている人、怒っている人、混乱している人との話し合いは、必ずしも思った通りの展開に進まないかもしれません。
良い話合いの始まり方は、良い終わり方に近づく可能性は高まります。クレームや紛争のない世界は存在しません。話し合いを好機と捉え、ビジネスや人生に役立つ経験や知恵を積むのも良いのではないでしょうか。