夜に爪を切ってはいけないが、鼻毛を切るのは良い理由 (その2)

 なぜ夜に爪を切ってはいけないのか

イラスト/筆者

 ある人が言った。「夜に爪を切ってはいけないが、鼻毛を切るのは良い」。夜に爪を切ってはいけない民俗学的な理由と、鼻毛は許される私的な見解をレポートします。

目次

「夜に爪を切ってはいけない」慈しみ

爪切りの謎かけ

 いまから半年前のこと、ある人が私に言った。「夜に爪を切ってはいけないが、鼻毛を切るのは良い」。その人は、その理由を教えてくれなかった。

「夜に爪を切ると 親の死に目に会えない」ワケ

 日本の迷信に隠された意味を研究する北山哲氏は、著書「なぜ夜に爪を切ってはいけないのか」のなかで説明している。

 かつて日本では、死者を埋葬する際に、その近親者が自分の髪や爪をともに埋めるという風習があった。この風習をきっかけとして、爪を切ると親の死に目に会えないという言い伝えが生まれたようだ。

 では、なぜ夜が忌み嫌われるのだろう。

 電気がなく、照明器具も発達していなかった時代は、暗がりの中で深爪をしたり、足の指を傷つける恐れがある。こうした危険を招く行為も、親不孝の始まりになると言われるようになった。

 親不孝を戒めると同時に、子に対しては「太陽が出ている明るい場所で、爪を切りなさい」という慈愛が隠されていたのかもしれない。言い方を変えれば、電気もあって、照明器具も発達した現代では、心配ご無用。夜に爪を切っても良いのではないか。

冒険者は夜に爪も切れば、鼻毛も切る

伸びた鼻毛は、伸びた爪よりもヤバい

 想像するに、暗い夜間。爪を切るよりも、鼻毛を切る方が難しい。爪と違って、鼻毛は鏡を見て行う間接的な作業だ。それでもなお、伸び放題の鼻毛は、見つけ次第に切った方が良いだろう。伸びた鼻毛と伸びた爪では、意味するところが大きく異なるのだ。飛び出した鼻毛に気づかず出勤したり、ましてデートをするような事態は、できれば避けたい。

時に、私たちはリスクを承知でチャレンジする

 時に、我々はリスクを承知で冒険をしなくてはならないことがある。「夜に爪を切ってはいけないが、鼻毛を切るのは良い」という言葉には、困難のなか前向きに取り組む挑戦者の姿が隠されているだろう。

付記

 夜に爪を切ってはいけないが、鼻毛を切るのは良い

なぜ夜に爪を切ってはいけないのか―日本の迷信に隠された知恵 (角川SSC新書)
北山 哲
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この記事を書いた人

法政大学文学部哲学科卒。編集関係の業務に従事。金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味は絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。

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