2013年12月16日、恵比寿LIVEGATEにて「孤独慣れ・子毒で無かれ・慣れは上手の素直なれ(後)」が公演された。楽しくて、面白く、飽きさせず、質の高いステージでした。ここでは、渡辺ユキヲ氏が率いるスペース☆シャンションに焦点にしぼりステージをレポートします!
■ポップな演出で彩る 渡辺ユキヲ氏のブルージーな詩的世界
クリエーターたちの歩んだ悲しみや喜びの人生は、作品のオリジナリティに貢献することを、渡辺ユキヲ氏からも感じます。渡辺ユキヲ氏が描く世界は、分かりやすく親しみを感じます。ブルージーな単語を使った言葉遊びが、描かれた世界に彩りを加えている。詩の内容はブルージーだけど、見かけはポップで明るい。面白いアートです。
■名脇役だった米田洋志氏のギター
米田洋志氏のSGによるギターは、心底に素晴らしかった。表情を変えず、まるで他人事のようにステージに立っていた。仕事をする姿はクールだが、テクニックはメチャクチャすばらしく正確で優雅だった。良い仕事をする態度を、米田洋志氏の姿から学んだような気がします。
単調なルート音を弾いているかと覚えば、ピアノを弾くようにタッピングをしたり。要所要所に必要なワザや音色を織り込んでいた。リズムも正確。本物のギブソンであろうSGのサウンドは、楽曲に魂を入れていた。惚れ惚れした。
■楽曲をひたすらに格好良くしたベースの岸田小石氏
ジェイソンのマスクをして登場した、岸田小石氏。岸田小石氏のサウンドが加わると、どうして格好良くなってしまうのか、その仕組みがぜんぜん理解できない。思い返せば、微妙に乱れのようなものがあった気もするが、乱れ自体も心地よさに繋がる。岸田小石氏のサウンドや自己表現には、私の理解を超えた格好良さの仕掛けや秘密があると思った。
■主役を食いかねなかった魅力を持つ、ばんびあおき氏のダンス
スペース☆シャンションが、単なる「バンド」で終わらない要素として、ダンサーたちが果たした役割は大きいと思った。ばんびあおき氏の朗読は、その内容は忘れてしまったが、聞いていたときの心地よさをはっきりと覚えています。ダンスは官能的だった。主役の地位を食いかねない程度に、その魅力を自制していた。このバランスは、結果的にばんびあおき氏自身とステージの成功に貢献していたと思いました。
渡辺ユキヲ氏の才能は、いわゆる「歌うこと」だけにとどまらない。映画に対する関心やファッションなど、多様な方面に拡がってゆく。それは、正しいことだと思う。渡辺ユキヲ氏の世界は、さまざなツールを求めている。ファッションかもしれないし、音楽かもしれなし、舞台演出かもしれないし、そして映画かもしれない。いずれのツールを用いても、アーティスト内面に刻まれてきた人生自体が表現を欲しているでしょう。
総合芸術に向かうアーティストとしての、渡辺ユキヲ氏の姿が見えてくるようです。