小説家の保坂和志さんは著書『書きあぐねている人のための小説入門』で「私が知っていた小説とはまったく異質な作品」として紹介している。ナイジェリアの小説家エイモス・チュツオーラ(1920〜1997年)の『やし酒飲み』。
「わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった」という書き出しで、やし酒を飲むことしか能のない男が、死んだ自分専属のやし酒造りの名人を呼び戻すため「死者の町」へと旅に出るという話。
たぶん翻訳者の故意によるものなんだと思うけど、翻訳は「だ・である」と「です・ます」が混在していて、それが独特の時間が流れる世界を演出している。