受験参考書『人物で読み解くセンター倫理』は、大人が読んでも面白い哲学入門書です。このなかで、著者の蔭山克秀さんは次のように書いています。
「いい文章に出会えるって、それだけで幸せだよ」[1]
誰のことかと言えば、16世紀にフランスで活躍したモラリスト、モンテーニュさんのことです。含蓄があり、洞察力に満ちた彼の『エセー(随想録)』は現代フランスでも「知識人の教養書」として読み継がれているそうです。蔭山先生はモンテーニュの言葉をいくつか紹介しています。
「読者よ、私自身がこの書物の題材なのだ」
「精神は、何か自分を束縛するものに没頭させられないと、茫然たる想像の野原にだらしなく迷ってしまう」
「エピクロスは、富むことは厄介をなくすことではなく、別の厄介と取り替えることだ、と言った」
「我々はこう言う。「キケロはこう言った。これがプラトンの教えだ。これがアリストテレスの言葉だ」と。けれども、我々自身はどう言い、判断し、行動するのか」
「我々は他人の知識で物識りになれるが、少なくとも賢くなるには、我々自身の知恵によるしかない」
「人は自分の頭上に雹(ヒョウ)が降ると、全半球に嵐が吹きすさんでいるように感じる」
最後の一文を読んで、たしかに人生は困難の連続だと思いました。とは言いましても、宇宙の果てまで続いているわけではありません。しかし、もめごとのまっただなかにいるとき、私たちはこのことを思い出せなくなります。モンテーニュのエセーは、我に返るために、現代でも役立ちそうです。
さっそく読んでみたくなりました。ところが、新訳『エセー(随想録)』は7巻もあり、しかも1冊2000円近くもします。
全巻そろえるなら、1万円超えの予算が必要ではありませんか。今回は「世界の名著」シリーズにある「<19巻>モンテーニュ」の古本を、まず買うことにしました。1967年に出版されました「エセー」の抄録です。
本代が158円、送料が257円でした。届きましたら、彼の言葉を通して物事を考えてみようと思います。
【脚注】
- 蔭山克秀『人物で読み解くセンター倫理』学研教育出版,2014,P93 ↩