仲のよい友人ができた。新聞社務めのXさんである。年上でロマンスグレーの紳士だ。
たまたま居合わせたところにテレビがあり、NHKでカネゴンという怪獣の画像が映し出されていた。1966年放送の番組「ウルトラQ」に登場する人気者だ。音が聞こえなかったので、なぜカネゴンが紹介されていたのかはわからない。「ウルトラQ」を子どもの頃にリアルタイムで見ていたXさんが、カネゴンの解説をしてくれた。
「カネゴンってのは、本当は金男って名前なんだ。貯金好きの男の子だったんだ。貯金への情熱は、両親も心配するほどだった。そして、貯金怪獣カネゴンになってしまったんだな」
話を聞いて混乱してきた。なぜ、貯金をすると両親は心配するんだろうか? むしろ、安心するものではないのか? なぜ貯金をすると、怪獣になってしまうのだ?
そういえば、私にはお年玉をめぐる、苦々しい思い出がある。集まったお年玉を銀行に預けた記憶がない。親にお年玉は巻き上げられたからだ。お正月、私はお年玉を両親に納める集金マシーンであった。子が貯金することを心配する親とは、こんな様子のことであろうか。
銀行にお金を預けるといえば、最近は金利がたいしてつかない。なものだから、株式や債券、不動産で資産運用するのも一理ある。株式市場にマネーを誘導しているのは、日銀のマイナス金利政策だ。預貯金しかしない国民は、日銀によって貯金怪獣カネゴンにされてしまう罰ゲーム受ける、と想像してみた。
預貯金は低リターンだけど、元金は保証されている。取り付け騒ぎは、戦前の話だ。余裕資金が一千万以上なら、たしかに株式投資も悪くはない。しかし、金男君のように手持ちの資金が小銭なら、証券会社への手数料が負担になる。預貯金の方が堅実な投資だ。
美男や美女になった方が得である。だから、わたしたちは日々、オシャレに忙しい。怪獣カネゴンは、がま口に似たみためでよろしくない。履歴書に写真を貼ると、さぞかし心象も悪くなろう。ひどい罰ゲームだ。一方で、堅実に預貯金するのは大切だ。だって、勝負のときには確実にいまある金が必要なのだから。