おせち料理を大晦日に食べてはいけないの?

お腹をすかせたクマ(イラスト・筆者)

お腹をすかせたクマ(イラスト・筆者)

 早いもので、2016年もあと僅かとなってしまいました。みなさまは、充実した一年でしたか?

我が家では、お正月には毎年、菜食系のおせち料理を用意します。大晦日のいま、目の前に明日のご馳走を見ていると、すでにお腹がすいてきました。

日本の伝統的な料理「おせち料理」には、お正月に家々で祀る年神(としがみ)へのお供えの意味があります[1]。縁起をかつぐ具材で、家族の幸せを願います。

という訳で、大晦日に食べたら「おせち料理」ではなく、オードブルなのです。

我が家の菜食おせち料理

我が家の菜食おせち料理

年神様へのお供えといっても、日本中すべての人々が、正月をおごそかに迎えるわけでないでしょう。いわんや私など、相当にいい加減です。ご馳走やお酒に囲まれれば、寝正月まちがいなし。

いい加減なお正月ということなら、かつて、酒のみならず、睡眠薬や覚醒剤で迎える日本人もいたほどです。文豪、坂口安吾その人です。

1946年12月、蒲田区安方町の自宅二階にて By 不明 - http://hohsi.exblog.jp/14499809, パブリック・ドメイン, Link

1946年12月、蒲田区安方町の自宅二階にて[2]

その期間に(正月前後だが)酒も過度に飲んでいるし、催眠薬も、覚醒剤も、のんでいる。どれ一つとして、生れてくる子供に遺伝して健全なものはない。

私はちかごろ再びかなり過度の仕事をしはじめた。時にはやむを得ず覚醒剤や催眠薬のヤッカイにもなるが、その用法には注意をはらっているし、過労に対処する方法として、ムリの限度をこさぬよう、そして、過労後の休養についても考慮を忘れたことはない。

出典:「我が人生観 (一)生れなかった子供」所収、『坂口安吾全集・444作品⇒1冊』 | 坂口 安吾 | 小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

「ムリの限度をこさぬよう、そして、過労後の休養についても考慮を忘れたことはない」と健康を気遣う一文を添えているのもすごい。このような、おおらかな時代もあったようです。時代は変わるものだと思わざるをえません。

大人物の坂口安吾を前にして、私はこう言いたいのです。大晦日におせち料理をつまみ食いするぐらい、大したことありません。つまみぐいどころか、もりもり、食っちゃいました。きっと年神様も一緒に、つまみ食いをしてくださったことでしょう。

では、みなさま良いお年をお過ごしくださいませ。


【脚注】

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この記事を書いた人

法政大学文学部哲学科卒。編集関係の業務に従事。金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味は絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。

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