【永島幸子 銅版画展レビュー】凛々しい鳥の不思議を読み解く楽しみ

永島幸子銅版画展(Oギャラリー UP・S)

永島幸子銅版画展(Oギャラリー UP・Sにて)

アートは、特別な場所にある特別なモノと思いがち。でも、生活を彩るアートとは、誰しも日常的に関わっている。美術作家・永島幸子さんの4年ぶりに開かれた個展を拝見したくて、銀座を訪れてみた。

永島幸子さんはデザイナー、イラストレーターとしても活躍している銅版画の作家さん。日々の出来事やニュースから感じたことを、動植物などをモチーフに単色刷りで表現する[1]。前回にお目にかかったのは2012年、神保町での個展でした。今回の個展では、藍染めを取り入れるなど、作風の変化があった。20点ほどの展示作品からピックアップして、いくつかレビューをしたいと思います。

ギャラリーを訪れると、大きめの作品が出迎えてくれます。

永島幸子作 「LETTERS -その命に-」 (エッチング、アクアチント、メゾチント、ドライポイント)

永島幸子作 「LETTERS -その命に-」 (エッチング、アクアチント、メゾチント、ドライポイント)

「LETTERS」は、シカの角が森の木になる瞑想的な作品です。

永島幸子作「LETTERS -その命に-」部分 (エッチング、アクアチント、メゾチント、ドライポイント)

永島幸子作「LETTERS -その命に-」部分 (エッチング、アクアチント、メゾチント、ドライポイント)

シカの毛の一本一本、木の枝の一つ一つを、丁寧に描く。一方、グラフティ風の遊び心ある抽象的な作品でも、魅力が溢れている。

永島幸子作「UNITE」(エッチング、アクアチント、ドライポイント、藍染め)

永島幸子作「UNITE」(エッチング、アクアチント、ドライポイント、藍染め)

「UNITE」は不思議な作品でした。凛々しく立つ鳥、その指は3本、足は3本。シャガールは指が7本指の謎めいた肖像画を描きましたが、「UNITE」にも解釈する楽しみがある。永島さんの作品を観ていると、鳥、光、命、そして青といった、象徴なシンボルが描き込まれているようです。藍染は、モノクロームの幻想的な世界を引き締めていました。

永島幸子作「馳せる億光年」(アクアチント、エッチング、藍染め)

永島幸子作「馳せる億光年」(アクアチント、エッチング、藍染め)

「馳せる億光年」は、大きな翼を拡げる鳥を、画面いっぱいに描きます。この作品にも表れる鳥は、4年前に行われたギャラリー福果の個展でも印象的なモチーフでした。

永島幸子作「休んでいる光」(アクアチント、エッチング、藍染め)

永島幸子作「休んでいる光」(アクアチント、エッチング、藍染め)

「休んでいる光」は、大好きになった作品です。細かい線が丁寧に描かれている。たくさんの光が静かに繋がりあっているみたい。心が鎮まり、温かい気持ちになってくる。

永島幸子作「休んでいる光」部分(アクアチント、エッチング、藍染め)

永島幸子作「休んでいる光」部分(アクアチント、エッチング、藍染め)

これらの作品をお部屋に飾ると、気品がグッと高まるでしょう。新聞小説に、ぴったりの挿絵にもなりそう。永島さんのアート活動は、今後もウォッチする価値ありです。

永島幸子 銅版画展

会期:2016.5.30mon-6.5sun
12時〜20時*最終日は11時〜15時
会場:Oギャラリー UP・S
104-0061中央区銀座1-4-9第一田村ビル 3F
tel. 03-3567-7772
http://www4.big.or.jp/~ogallery/

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【参考URL】
  1. more orange…周辺と作品制作のこと by orangewords


【脚注】

  1. 朝日新聞 2016年5月4日(火)付夕刊
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この記事を書いた人

法政大学文学部哲学科卒。編集関係の業務に従事。金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味は絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。

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