ちっぽけな星に住むちっぽけな宇宙人

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トップのイラスト/筆者

ちっぽけな宇宙人がいました。ちっぽけな宇宙人は、昔、とっても住み心地が悪い星に住んでいました。引越をしなくちゃいけないな……と考えていたときです。ちっぽけな宇宙人は、住み心地が良さそうな星を見つけました。見つけた星の役人に引越の相談をしてみると、大歓迎をされました。彼は彼の大切な奥さんとも相談し、星の引越を決心したのです。

新しい星に移り住んでみると、もちろん百点満点とはいえませんが、満足できる生活がまっていました。ちっぽけな宇宙人は、この星でガイドの仕事を見つけました。道に迷っている星の住民を、目的地まで導く仕事です。ハードな仕事ですが、誇りをもてる専門職でした。お給料も、上がりました。ちっぽけな宇宙人は、「まあまあだな」と思って、この引越に満足しました。

道案内の仕事が終わると、ちっぽけな宇宙人は、彼の大切な奥さんと一緒に晩ご飯を食べて、大切な一日を終えるのでした。

ちっぽけな宇宙人は、このように思っていました。

「なんてちっぽけな星なんでしょう!ちっぽけな自分が、歓迎までされて、楽しく生きられるのだから、ここはちっぽけな星に違いない。ひどい星に今も住む昔の友だちだって歓迎されるだろう。みんな、喜んで移り住んでくれるだろうさ。友だちがたくさん住んでくれたら、心強いし、楽しくなるだろうな」

ちっぽけなこの宇宙人は、住み心地の悪い星に住む昔の友だちに、手紙を書きました。

新しい星の生活の素晴らしさを書きつづりました。友だちが、ちっぽけな宇宙人が住む星を気に入ってくれたなら、ガイドの仕事を紹介しようと思っていました。

だれもやってきませんでした。幾人かの友だちは、この星を訪れようとしたのです。しかし、宇宙船の操作がうまくできなかったり、時間を間違えたり、星の市役所の審査が通らなかったり……。

さまざまな理由があって、星に引越することができませんでした。それからしばらく時間が経ってから、一人の友人が、この星に着陸しました。

ちっぽけな宇宙人は、ひとりぼっちだと思っていたので、友だちの訪れを、とても喜びました。

星の市役所も友だちを歓迎しました。この星の素晴らしい場所へ道案内もしました。星の地理の勉強も一緒にしました。ちっぽけな宇宙人は、この友だちが星を気に入って、長く住んでくれるといいなと願いました。

ところが、無事に着地できた友だちは、ある日、さよならも言わずに、姿を消してしまいました。

ちっぽけな宇宙人は気がつかなかったのですが、友だちにとってこの星は、とても居心地が悪かったようなのです。ある日泣きながら、星を出ていったという噂を聞きました。理由は分からずじまいでした。

ちっぽけな星に住むちっぽけな宇宙人は、引越できなかった友だちを、大変に申し訳なく思いました。

「ここは、住みやすく、誇りをもって働く仕事だって用意されているのに。なぜぼくの友だちは、ここに住むことも、着陸すらもできないのだろう?」

半年の間、考えあぐねた結果、以下のような結論に至りました。

自分にとって素晴らしいと思うこと、住み心地が悪いと思うことが逆のことだってあるだろう。ちっぽけな自分が素晴らしいと思うこと、カンタンだと思うことでも、必ずしも他人がそう思うとは限らない。ちっぽけな自分が感じたことなどアテにはならないのかも。

ここは、宇宙のなかでひっそり隠された星。ここに住む孤独な宇宙人は、友だちを招待することに興味がなくしてしまいました。この星で出会い、新しい友だちを作ろうと思い始めました。自分のために働いて、自分のためだけに生きようとも思いました。

そして、ちっぽけな宇宙人は、家族と自分ために新しい小さな目標をたてました。

ちっぽけな星に住むちっぽけな宇宙人は、一日の仕事を終えると、奥さんとご飯を食べて、大切な一日を終えます。ご飯を食べるときには、二人の長い人生計画だったり、数週間後の旅の計画などを話しあうのでした。

ちっぽけな宇宙人のなかに、ワクワクする新しい気持ちが芽生えてきました。困っている人に感謝される星の道案内の仕事は、とても誇りが持てるなとも思いました。

 
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この記事を書いた人

30代から美術制作を描き始めました。第35回、第34回 現代童画展入選。第20回 日本の自然を描く展 自由部門入選

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