パット・マルティーノはクールで紳士的な風貌だけど、サウンドはどこかしら狂気的で、凶暴さが織り込まれているような気もする。格好いい大人の手本を垣間見るような気もします。
“Pat”違いのジャズギタリスト
Pat MethenyとPat Martino
Pat Martinoのアルバム“Baiyina (The Clear Evidence)”は、私の愛聴版です。この素晴らしい芸術作品との出会いは、私の大学時代にさかのぼります。当時、私の友人に経営学を学ぶ「ロバート中島」という男がいました。ロバート中島は、友人のなかでも群を抜いてハンサムでした。しかしながら、そのハンサムさを追い抜くほどに、どこかしらヌケていて、愛すべきテキトーな人物でもありました。
ある日、私はロバート中島に「俺、ジャズギタリストのパット・メセニーが好きなんだよ」と言いました。ロバート中島は私に「俺もパットの凄いCDを持っているから貸してやるよ」と言いました。私はワクワクしながら、CDを心待ちにしました。
パット・マルティーノ“Baiyina”込められた変態ギターの魅力
数日後、ロバート中島からCDを手渡されました。アルバムのタイトルは「Baiyina (The Clear Evidence)」。アーティストは、Pat Martinoと表記されていました。
パット・メセニーはJAZZのスタンダードなアーティストで、サウンドは上品で、都会的で洗練された、優等生的なギタリストです。それとは似ても似つかない、アシッドな雰囲気漂うCDジャケット。「これって、パットだけどメセニーじゃないと思う……。でも、面白そうなので、まあ聴いてみるか」と借りたのでした。
危険でメチャクチャ格好いい
友人が大絶賛するCDです。録音されたのは、1968年。ジャズらしからぬサイケデリックなサウンドでした。テキトーな男が貸してくれたCDは、なるほど心底素晴らしかった。
その後、Pat Martinoの「Baiyina (The Clear Evidence)」は、私の愛聴盤となりました。愛すべき不良の音楽だと思いました。
Pat Martino “Baiyina”に関しては、変拍子(10拍子とか…)で、バックではシタールが鳴り響き、そこでブルージーなギターを高速で演奏されます。シタールが醸し出す世界は高次の精神的でもありますが、変態的でもあります。はじき出されるフレーズは、どれもが格好良く、ピッキングも正確無比。クールで紳士的なパット・マルティーノは、ギターを通して、凶暴さと不良さと変態さ、一言で言えば隠し持った「反社会的な魅力」を醸し出していると思う。ワクワクします。
パット・マルティーノを聴くたびに、ロバート中島を思い出します。20年以上会っていないけれど、いまも元気なのだろうか。パット・マルティーノは、いまも現役です。