漫画家・山川直人(以下敬称略)の作品は、とても素晴らしい。親しみ深い絵柄で、誰しもが身に覚えがある人生の悲哀を描いている。読者は、悲劇物語を通して、人生の教訓を学ぶだろう。
一話完結の物語で登場する主人公には傾向がある。漫画家、写真家、デザイナー、探偵、喫茶店のマスター……。小道具もカメラ、コーヒー、UFOキャッチャー……と、これまた傾向がある。物語の背景には、作家本人の人生や想いが見え隠れする。
多くの人のパンやご飯になるような漫画 シアワセ行進曲
『シアワセ行進曲 (BEAM COMIX)』で言わせている吹き出しは、作家自身を代弁しているだろう。
山川直人の絵柄は流行を追ったものではない。絵柄は変わるが、それは時流に迎合したからというよりは、作家の試行錯誤の表れにも思われた。タッチは、作家の唯一無二のもの。
救いがないままに幕を降ろす不条理な物語も少なくない。別れ、死、果たされない夢……。悲劇や不条理劇の終わり方は、たしかに「売れ筋」じゃないかもしれないけど。
しかも、読後感は、ずどーんと重い気持ちになるものまでさまざまな。(まるでレッドツェッペリンの「天国への階段」を聞き終えた直後のような重い読後感!!この例え以外に思いつかない……)
商業誌に連載を持つにもかかわらず、自費出版や同人誌にも発表の場を求める。この作家の姿には、「描きたいものを描く」アーティストとしての姿をかいまみる。
人生のバイブルになるかも
『地球の生活 (BEAM COMIX)』では、
シュールだけどリアル ナルミさん愛してる
可愛らしい“ナルミさん”の、ありふれた日常生活を描いてた「ナルミさん愛してる―その他の短篇」。ほのぼの系の話かと思っていたんだけど。やっぱり、ずどーんと重いオチが待っていた。こんな終わり方、ルール違反じゃないの??と、カエルのぬいぐるみ“ドミノ”になった気持ち……。
愛は見つけづらく壊れやすい
山川作品において、“ずどーんとくる悲劇”が時折登場する…。なぜ、悲劇が重要なのか。それはだな、悲劇を通して、どんなシアワセを求めるべきなのかが、明かになるからだと思う。教訓も含まれているだろう。愛は見つけづらく、壊れやすい。おじさんは、つくづくそんなことを思うのだよ。だから、ワイフを大切にせねばと思うし、このブログを読んでいるあんたも、身近なパートナーや友だちを大切しなさいよ!
山川作品を読むと、かけがえのないものをすでに得ているのなら、全力でそれを大切に守らねばとも思わせる。