雑誌『思想の科学』は、1946年に鶴見俊輔、丸山眞男さんらによって創刊された人文社会系の雑誌。部屋の掃除をおりましたら、この古い雑誌が一冊でてきました。ページをめくると、そこには若き日の自分がいたのです。
『思想の科学』/1996.2
目次
生まれて初めて「原稿料」なるものを貰う
生まれて原稿料をもらったのは、中野総合病院での入院体験記でした。といっても、500円分の図書券。報酬があることはうれしいもので、自分にとって記念すべき出来事です。
原稿はメールなどではなく、ファクスで入稿しました。まだ、パソコンが普及していない時代です。
『思想の科学』には当時編集者のNさんという方がおられました。とても仕事ができる人で、赤字で指摘が書かれた原稿の戻しからは多くを学びました。
その後、入院生活も終わり、私は人より遅く大学を卒業し、出版社で働きはじめました。写植からDTPへと移り変わり……、時代の変わり目でした。さまざまな技術が消えては生まれてきましす。消えようとしているもの、いまそれは「紙の媒体」そのものかもしれません。
情報や知恵自体は、必要とされ続けるでしょう。器が変わるだけ。面白い企画ができる編集者は、紙にこだわらなくても、才能を伸ばしてゆけるでしょうから。大切なことは、紙であれデジタルであれ、それらを手にした人々の生活が変える価値があるかどうかに思えてきます。